〜二日目〜 東北縦断チャリ旅を振り返る

AM5:00起床。

手早く荷物をまとめる。

トイレへ行って顔を洗い、コンビニで朝食購入。

テント横のベンチで朝食済ませる。




おはよいす。パスタ566kcal、オニギリ160kcal,コーラ135kcalを摂取して出発である。体イテエ。昨日より長い行程をこれから走るとかマジで無理としか思えん。頑張ります。 pic.twitter.com/IjaZczm1QI






テントを畳んでバックパックにしまう。夜のうちに降った雨は幸いにも少しだったようだ。これで二日目のオープニングも雨だったらマジでやりきれねえ。

昨夜会った大学生君も起き出してきた。

「たぶん俺ちょっと早めに出るからここでサイナラだね。そっちも気をつけてね」

と声をかけて、準備運動を始める。ここで|冫、)ジーという視線に気付く。年の頃は60手前というところだろうか。旦那さんが話しかけてきた。

旦「どこまでいくの。」

俺「岩手までです。夏休みで帰省を。」

旦「ほう。どこからきたんだい。」

俺「東京です。」

旦「ほう、ここまでどのくらいかかったね。」

俺「1日ですね」

旦「おお、無茶するなあ」

俺「そうですかね?」(なんて言いながら俺も無茶だったと思ってた)

旦「装備は。ふむ、俺の若い時なんかは…」

やっぱりこういう展開になるよね。

先を急ぎたかったのだが、せっかく声を掛けてくれたのも縁だし…と30分ほど談笑。

旦「それで、今日はどこまでいくんだい。」

俺「岩手です。」

旦「エッ。今日で走り切るの!」

俺「そのつもりで。」

旦「300kmくらいあるだろう!大丈夫なのか?」

俺「ですね。大丈夫だといいんですが。」

旦「そりゃあ邪魔しちゃったな!じゃあ頑張って。気をつけてな!」

旦那はそう言って去っていった。気遣いあざす。

では予定を大分オーバーしてしまったが出発。

AM6:00。Stage2スタートだ。

予め調べていた中に、福島〜宮城の県境越えは4号を外れて阿武隈渓谷沿いが良いとあった。しばらくいって伊達で4号を外れる。ここでまたGPSをロスト。なんなんだよもう。役に立ちやがらねえなクソ高ェ割によう!と悪態をついてもどうしようもない。仕方がないからスマホでちょくちょくと調べつつ進む。阿武隈渓谷沿いに入ってしまえばまたしばらくはまっすぐだ。

ナビの為に買ったようなもんのGarminがさっぱりアテにならずイラツキつつも、阿武隈渓谷沿いに入る。この頃には陽射しも大分きつくなり、アームカバーを装着して陽射し対策。既にウェア、タイツ類は初日に十分汗を吸って湿り、不快さと悪臭を放ち始めている。走行中だけは気にならないことに救われるな、そう思いながら走る。バイパスを外れたお陰で交通量は激減。景色ものどかになっていく。




宮城入り! pic.twitter.com/17jVi1JBCY





posted at 09:19:40




宮城入りだ。写真を取りつつウィダーを飲む。セミの鳴き声が響き渡ってる。体中バッキバキで痛いし、ウェア類も気持ち悪いが、気分は高揚してきた。




ヤバイ!サイッコウ! pic.twitter.com/cPaTaAnrj3





posted at 09:19:48




阿武隈渓谷沿いを走りながら思った。絶対ここには誰か連れてもういちど来たい。晴天の日にここを走ったら、マジで忘れらんないと思う。本当に最高だ。

一時間ほどして渓谷を抜ける。

角田市手前の丸森でコンビニ休憩していると、後発だったはずの大学生くんに既に抜かれていることに気付く。一々止まって中継したり写真撮ったりしてないからというのもあるだろうが、ルートも若干違っていたんだろう。それに、何より体力が違う。やっぱり若いやつには敵わない。ムキになっても仕方ないので、急ぎすぎずに仙台を目指す。雲は殆ど無くなった。陽射しがキツイ。そういえばGPSがしっかり補足されるようになってる。やっぱり天候が関係あんのか?確かに朝は曇っていたが…。

名取に入ってまもなくあさひを発見した。後輪に充填されているCO2が気にかかったので、一旦CO2を全て抜いて、空気を入れなおして貰った。







昼前に仙台入り。予定より若干巻いてる。それでも目算通りに行って日が変わる頃に目的地着になってしまうだろうが…。陽射しがキツイ。コンビニで日焼け止めを買って露出部に塗りこむ。首筋は真っ赤に焼けて痛い。この段になって日焼け止めを塗る意味は無いような気もしたが、気休めでも無いよりは良いと思った。

交通量はかなり増えた。排ガスが半端無い。何故ワザワザ買ったマスクを忘れてきてしまったのか…いや、持ってきてもこの熱気では装着していられなかっただろうか…考える意味は無さそうだ。後悔してもどうにもならない。

食欲は前日同様全くといって良いほど無い。変わらずゼリーを中心に補給食を摂る。たまにブラックの缶コーヒーを飲み、菓子パンを食べる。それでも消費カロリーに比べれば全然足りないだろう。

仙台を抜けるあたり、泉に入ったところから道が悪くなり始める。アップダウンもあるし、下からの合流もあって、35km巡航ぐらいでいかないと車の流れを相当邪魔してしまう。こういうところは本当にチャリを無視した作りになってる。精神的ストレス半端無い状態のまま何とか高速道路状態の4号を切り抜け、仙台を抜ける。コンビニで休憩。陽射しとガンガン飛ばしたせいで相当バテてる。アイス食ってクールダウン。さぁ再出発、と思えばまたパンク。また後輪だ。タイヤを外してよく見てみると、貫通するレベルの亀裂がいくつも入っている…。Grandprix4000s、クッソ高いのに1000kmも走らずサヨナラか…。何とも言えない気分になるが、致し方ない。トラブル時の緊急用タイヤとして持ってきたケブラービードのBONTRAGERタイヤを入れる。二日間に渡ってハンドルを握っていたせいか、気づくと親指に力が入らない。握力が無くなってるんだ。仕方がないからタイヤレバーを使ってタイヤをはめる。ボンベで一気にCO2を充填。これでタイヤはもう無い。チューブも残り一本、ボンベも1本。次パンクしたら後が無い。

不安に駆られながらも再出発。富谷町であさひを発見、寄ってみるもCO2は取扱なし。仕方ない、次パンクしたらヒッチハイクも覚悟するか。

古川に入る。大崎市?聞いたこと無いな。合併で出来たのか…?




そろそろ体力の売り切れ近い。体調はよいものの、握力は無いし、右足のアキレス腱は痛いし、肩と腕、腰はパンパンだ。

posted at 15:29:36




15:00も過ぎ、陽射しのピークも過ぎたと思われた。コンビニで休憩しつつ、つくづく体力の限界を感じる。パワーバーやエナジーリキッドなど、高価な補給食を買い込んできたがとても喉を通らない。ひたすらコーラとゼリーを飲む。大きな峠は初日の栃木福島間だけだ、もうあとは消化試合みたいなもん…そう思って気力を振り絞るが、本当にキツイのはこれからであった。

ルートの高低図を確認して貰えばわかることだが、実に小刻みなアップダウンが約100kmにわたって続くのだ。これには心が折れた。登っては下り、登っては下り、登っては下る。下り始めるたびに、道の先にはまた上り坂が見えている。

「まだまだ。登るよ、登ってやらあ。負けねえ。」

独り言が増えた。限界の証拠だ。

「…!まだ登らせんのかよ。岩手ってまだなのか?ここが一番ツライんじゃねえの…?」

なんど同じセリフを口にしたことか。

この頃から右足アキレス腱のあたりに違和感を感じ始める。しかし体中が痛くてどこか一箇所を気にするような余裕は無い。手のひらの皮も剥け、握力は無い。幸いにも体幹と大腿には酷い疲れがまだ自覚されないことだけがカラダを動かし続けられる希望だった。

18:00。




さっき送れなかったやつ。市街地に入ったのでお届け! 「ついに、、ついにキタゼ!!!旅も終盤に入る!!!」 pic.twitter.com/L9Jn8oqVGD





posted at 18:28:39




この看板が見えたときは、正直震えた。ついに岩手までやってきたんだ。チャリで2日間、400kmオーバー。それなりに、出来るもんだな。あとは100kmもない。本当に限界だろうが、いけるはずだ。この時はそう思った。

日も完全に落ち、街灯も殆ど無い。オマケにコンビニも殆ど見かけなくなった。そして、にわかに右足首のアキレス腱が痛み始めた。




うーんいかんな。足首の痛みが限界だ。北上まで行ってからGOorSTOPを決めるか…

posted at 20:07:43




まさかとは思ったが、ダンシングすれば激痛が走るレベルの痛みに変わっていた。なんで…そう思ってもどうしようもない。ともかく、北上までいけば確かデカいネカフェがあったはずだ。そこで止まって、アイシングしてシャワーを浴びて晩飯を食い、8時間は眠ろう…そう思って自分を奮い立たせる。しかしここでまた雲行きが怪しくなってきた。月が雲に隠れ始める。GPS補足精度が怪しくなってきた。さっきからナビは道がないところを指している。どうなってんだ。足がイテエ…

いつのまにかバイパスを外れ、旧道に迷い込んでいたようだ。スマホで道を確かめつつ、なんども暗闇の中止まっては進む。予定外の駅に出てしまった。バイパスに戻るにはどうすればいい?スマホでマップを検索していると、雨…。リタイアを決めた瞬間だった。足を引きずりながら駅前まで行き、チャリを畳んだ。アニキに電話した。

「あ、アニキ?悪いんだけど、22:00にそっちにつくことになりそう。起きてるかな。うん、悪いね。」

アニキに到着時刻を告げ、あまりに悪臭のするジャージを脱ぎ、ユニクロで買ったルームウェアに着替え、電車に乗り込んだ。

ここで応援してくれていた同僚やツイッターのフォロワーさんたちにDNFを報告。

215.99km。二日間のトータル480km地点でのリタイアだった。

アニキ宅についてから、風呂に入るのに脱ぐと、カラダはエラいことになっていた。

タイツのストッパー?になっている内張りのテープの部分はぐるりと水ぶくれになり、イテェなと思っていたケツ…会陰部は皮が剥けていた。激痛だったアキレス腱のあたりは腫れ上がっていた。腱を伸ばしたり捻ったわけじゃないから、肉離れだろう。筋断裂まではいってないっぽい。大事をとってリタイアしたつもりだったが、とうの昔に限界を迎えていたと考えるべきだろう。全くもって自己管理は出来ていなかった。綱渡りだったんだ。ここまで自分で自分のことをわからない、判断出来ないって事、あるかよ…。結構凹んだ。

ベッドに横たわっても、疲れすぎて、体中痛すぎてまったく眠れなかった。眠気はあるのに、疲労し過ぎていたんだろう。これだけでもやりすぎだったことがよくわかる。眠れずにスマホでツイッターを確認すると、温かい励ましの言葉がいくつも届いていて、なんだかすごく救われた気持ちになった。励ましてくれた皆さん、ホントにありがとうございました。

こうして俺の無謀な東北縦断チャリ旅は終わったのだった。

RESULT(TOTAL)

走行距離:480km

走行時間:20時間55分

平均速度:22.9km/h

獲得標高:1885m

消費カロリー:9510kcal

最高速度:50.9km/h



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